長谷川彰良さん

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服のつくり手としての顔だけではなく、ビンテージに対する造詣が深く、様々な服 づくりに関するセミナーなども企画する長谷川さん。2016 年には、ご自身の個展 「半・分解展」を 3 都市巡回し、個人の企画展ながら 1400 人以上を動員されました。

そんなマルチな活動をする長谷川さんの服に対する想いを聞きました。

―この世界に入ったきっかけ―

KENSUKE:作り手になろうと思ったきっかけは何ですか?

長谷川さん:学生時代に垣田幸男先生というフランスで修業をされた方からテーラーメイド (スーツの仕立て)を教わりました。 それまでは既製服の作り方しか教わっておらず、テーラーメイドというものを経験 し、こんなに手間をかけて作る服があるんだ!という感動を覚えました。 そんな時に、古着屋で偶然見つけた 1900 年代につくられたフランスの消防服を、何 となく買ってみたんです。 それを夜中に分解していたら涙がこぼれて…。 100 年以上前の服なのに、垣田先生から教わったテーラーメイドと全く同じ作り方 がされていたんです。 こんな作業服が、あんなに手間のかかっているスーツと同じ様につくられているん だ…ということに感銘を受けました。 その時、100 年前の感動を 100 年後の未来に自分が繋げる。と、決めたんです。

KENSUKE:そうなんですね。

長谷川さん:もし、100 年後の未来に誰かが僕の服を分解して、涙を流してくれたら、それが 僕の幸せだなと思い、つくり手になろうと思いました。

KENSUKE:洋服の学校に入るきっかけはあったんですか?

長谷川さん:それは単純に服が好きで、小学校 3,4 年のときに初めて裏付きのボストンバッ グを作ってみたんです。父親のミシンで。 それからバッグだけではなくズボンとかも作ってみたり。 小学校 3 年生くらいには、将来服作りを生業にするんだろうなと何となく思っていました。 親がそういう仕事をしている訳では無いのですが、偶然家にミシンがあって、偶然触って、縫って、なんだか面白い な…というのがきっかけですね。

 

―ビンテージに対する思い―

KENSUKE:長谷川さんは 100 年以上前のビンテージに対する造詣がとても深いですが、ビンテージを研究するようになったきっかけはあったんですか?

長谷川さん:もともと古着は好きだったんですけど、100 年以上前の服とかは全然興味がなくて。 ところが「テーラーメイド」というものを学んだときに、洋服の見方が少し変わっ たんですね。 自分が思う「良い服の物差し」が定まってきて、そんな時、偶然目に留まったというか、感覚的に気になったのが 100 年前・150 年前の衣服だったんです。そこから のめりこんでいきましたね。 「行くとこまで行って、戻ってこれたら戻って来い」と、岡山にいる師から言われまして、それで吹っ切れました。笑

KENSUKE:そうなんですね。メインに集めている年代などは有るのですか?

長谷川さん:パリ万博から第一次世界大戦までの服を中心に取集してます。最近は、更に遡りフランス革命前後の服にも手を出し始めました。今後は、スーツの誕生日とされる1666 年頃の衣服まで集めてみたいです!

KENSUKE:なにか文献を参考にしていろんなものを買っておられるのでしょうか?

長谷川さん:勿論、様々な文献を参考にしたり、お世話になっているディーラーやコレクターと情報交換をしながら買っています。 個人的に良い経験となったのが、旧いテーラーの本に書いてあるパターンと実際の 古着は同一のパターンなのか気になり、テーラーの先生に教わりながら検証してみ た事がありました。 そのパターンで試作品を縫ってみて、自分の持っている古着と同じシルエットに なった時は感動しました。 そんな事を繰り返している内に、身体や目がパターンを覚えるようになってきまし たね。

 

―自分の服作り―

KENSUKE:長谷川さんご自身の服作りに関してはどうでしょうか?

長谷川さん:学生時代は、とにかく古着を真似してみました。分解して型紙を抜いてみて、つくってみる。 つくって、こわして、つくって、こわしての繰り返しですね。社会人になってからは、幾つかのテーラーの塾に通ったのですが「着心地の良い服 とは」という課題に、熱中して取り組める期間がありました。 その時間は本当に貴重な経験でした。古着一辺倒ではなく、テーラードの着心地の追及、本業のカジュアル製品のつくり 方を学びました。 メンズの布帛しかやっていないので、パタンナーとしては偏っていて、あまり使えない人材なんですけどね。笑

KENSUKE:そなんですね。

長谷川さん:そうですね…。 自分の中にキーパーソンとなる人が 3 名ほどいまして、今でもその人たちからは刺 激を頂いてます。 Workers(http://www.e-workers.net)を運営する舘野高史さんからは服づくりの楽しさをStudio Kakita の垣田幸男先生からは服づくりの奥深さを中野香織先生(エッセイスト/ 服飾史家/ 明治大学国際日本学部特任教授http://www.kaori-nakano.com/ )からは服づくりの豊かさを教えて頂きました。

―現在の活動―

KENSUKE:現在長谷川さんは作り手としてどういった活動をされているんでしょうか?

長谷川さん:一番よく言われるのが「ビンテージマニア」みたいな側面が強いんですけど、そのイメージを払拭したいと思ってます。笑 生業になっているのは、所謂パタンナー業がメインですね。 ただ、ブランドによって関わり方が大きく違います。 生産まで手掛けたり、企画の段階から一緒にやったり・・・ただパターンを引くだ けの仕事はしたく無いですね。 また、セミナーやトークショーなどのコーディネートもしています(※インタビュー時、パンツ職人である尾作隼人さんのパンツセミナーが開催されていた) ただ、一番長いのは「ブロガー」としての顔ですかね。もうすぐ 10 年になります。 色々やってるね。みたいなことは言われるんですけど、僕のコンセプトである「 100 年前の感動を 100年後に繋げる」になりえる事は全部やってやろうと思ってい ます。

KENSUKE;そこはぶれていないんですね!

長谷川さん:はい。意識しています。 ですから服づくり以外のことも積極的にチャレンジしています。 2016 年は、その集大成となるものを「半・分解展」という形で、京都・愛知・東京と巡回展示しました。僕のコレクションする衣服は「ファッション」というジャンルにカテゴライズ出来 ないものだと思っています。 まるで一種の「芸術品」です。見る人によって、感じ方がこんなにも違う衣服は他に無いと思い「半分分解する」 という形式をとり、より深く味わって頂けるように展示しました。

KENSUKE:そうでしたか。インタビューする前は完全な作り手側の人だと思っていたのですが、本当にいろいろなことをされているのを聞いて、少し長谷川さんに対する見方が変わってきました。

長谷川さん:もともとは「職人」になりたいと思っていたのですが、Blog がキッカケで様々な仕事を頂けるようになり「100年前の感動を100 年後に繋げる」という事は、モノ づくりをする以外にもアプローチがあったんだ!と気付き、現在はセミナーや個展などの活動にも力を注いでいます。

KENSUKE:ありがとうございました。今後の活躍も応援しています!

 

長谷川彰良さん
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